アスペルガー症候群・高機能自閉症の人のハローワーク、という本を読んでいる。
冒頭では、こんな言葉が綴られる。
アスペルガー症候群・高機能自閉症の人の潜在的な才能が生かされていないのは、もったいない話だ。アメリカの労働力には、彼らの貴重な能力が必要だ。
(中略)才能を伸ばしさえすれば、もっと楽に仕事を見つけられるのに。
自閉症スペクトラムの人が仕事の世界に入るなどして社会に貢献しなければ、社会の人も損をする訳です。
冒頭から、これは読むに値する本だと感じた。何よりも、この本は発達障害と呼ばれる人だけに書かれた本ではなく、そうした人々が存在する社会のために書かれた本なのだ。いい本というものは、多方面からの視点が入っていなければいけない。当事者の苦しみだけを綴った本は、共感は読んでも残念ながら提言までは至らない。大切に読んでいこう。そう思った。
前半は、自閉症スペクトラムの人間が社会でうまくやっていくために「本人が」気をつけるべきことが記載されている。身だしなみや仕事の優先順位の付け方、規則正しい生活を送ることなど、社会性を養っていく基本的な要素だ。これはいくら自身が自閉症スペクトラムであろうと、本人の自助的な努力なしに仕事でやつ役できることなどもちろんないことを示している。当然のことだろう。
具体的な提言として、以下の記述がある。
自閉症スペクトラムの人が長年勤めやすい職場の特性
数学教師、コピー機の修理技師、研究科学者、産業機器の製図技術者、溶接士、工場の保守管理担当者、司書、コンピュータプログラマ、コンピュータ技術サポート担当者、エンジニア
基本的には、専門的な知識や技術を身につけ、それを元に社会の役に立つ仕事だ。逆に言うと、例えばトップ営業マンや組織の(中間)管理職、対面スキルが重視されるポジションには向いていないことになる。モノを扱う職務が多い傾向もある。
私達自閉症スペクトラムの人間は、どんなに頑張っても「社交面で正常」にはなれないでしょう。周囲に難なく溶けこむことはできないでしょうから、雇用主が私達を手放せなくなるほど仕事に秀でていないといけないのです。自分の才能がなんなのかを早めに知り、伸ばしていかなくてはなりません。
(中略)そのためには、一般経済の動向にもついていかなくてはなりません。地方紙のビジネス欄と世界のニュースの両方を見るのです。(中略)ソーシャルスキルが完璧になることはないので、ほかに強みを持たなければならないのです。
ここの部分を筆者は何度も強調する。そうなのだ。社会で生き残るには、自分が勝てない分野(社交性、会話力、対人スキル)などで戦っても消耗するだけなのだ。スパッと頭を切り替え、専門的なスキルを身に付けなければいかない。これがわからずに、変に「自分はすべての面で優秀だ」などと(もちろんそんな思い上がった考えはないだろうが)考えてはいけない。「努力すれば全ての能力は改善できる」も必ずしもそうではないのだ。弱みは消すことはできても、弱みそのものを長所にすることはできない。スパッと切り替えよう。
専門的な脳には3つある。視覚型、音楽/数学型、言葉リスト/翻訳者型である。
例:言葉リスト/翻訳者型ジャーナリスト 翻訳者 司書 証券アナリスト コピー/エディター 会計士 予算アナリスト 簿記/記録管理者 特別支援教育の教師 図書の索引作成者 言語聴覚士 在庫管理スペシャリスト
視覚型、音楽/数学型の適職リストも記載されている。自分がどの特性なのかは、以下サイトもご参考に。
自分の感覚で、おおよその人が自分のタイプが分かるのではないだろうか。
本書後半では、実際の自閉症スペクトラムの方の就業実例が載っている。さらには、各県の発達障害者支援機関のリストも日本版として記載。東京都の期間を調べてみたが、まだ活動中の期間だった。ぜひ、人生の突破口を開きたいと考えている方は、一度手にとって見て欲しい。
関連図書 『発達障害の人の就活ノート』
※本書籍で、Kaienという就業支援サービスに出会い、説明会申し込みをいたしました。
是非ご覧ください。
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